宇宙は本当にひとつなのか (ブルーバックス)を読み終えました。ここ10年くらいの観測技術の向上により、宇宙に対する認識が急速に変わってきていることが本書を通してうかがえ、現時点でわかっていることおよびわからないことが明確に整理されています。時折断片的に入ってくる宇宙物理の話題がこうやってまとまると、今後の宇宙に対する認識が今まさに変わろうとしているということがわかります。
2003年以降、宇宙全体のエネルギーの内訳がわかってきて、原子のエネルギーは実は5パーセントもなく、23パーセントが暗黒物質、73パーセントが暗黒エネルギーでしめられているのだそうです。我々が見ている原子が宇宙を構成するエネルギーの4.4パーセントしかないというのは驚きです。宇宙の大部分は、今まで観測されていない物質やエネルギーでしめられているということがわかってきて、そう考えないと今観測できる現象を説明できないということになっています。たとえば加速度を増して膨張していく宇宙や、宇宙の中に濃淡を作っている銀河団は、暗黒物質や暗黒エネルギーなしでは説明することができず、さらに銀河の構成自体も暗黒物質を仮定しないと成り立たないことがわかってきています。
では、暗黒物質や暗黒エネルギーは一体なんなのか、それらを見つけようとする実験はどのようなものがあるか、そうした未知なる物質やエネルギーを説明する理論は何かといった話から、タイトルにも通じる多元宇宙、すなわち宇宙がいくつもあるという考え方と、宇宙はもっと多い次元で成り立っているという考え方まで紹介されています。
この辺りの話になってくると、子供の頃から不思議に思っていた宇宙の外はどうなっているのだろうかとか、マンガで出てくるワープとはどんなものだろうかという知的好奇心を刺激され、童心に帰って読み進むことができました。
ちょうどこの本を読み終えたら、タイミングよく以下のようなニュースが飛び込んできました。
ニュートリノは光より速い?
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110923/t10015808011000.html
興味深い観測結果ではありますが、本当だとすれば物理法則の根底を覆すような事態で、それこそ世紀の大発見となります。ただ、個人的な感想としては、測定機器の誤差や、GPS の精度の問題に帰着していくのではという気がします。
実際に、CERN のサイト
OPERA experiment invites scrutiny of unexpected results
http://public.web.cern.ch/public/
に行くと、次のような記述があります。
Given the potential far-reaching consequences of such a result, independent measurements are needed before the effect can either be refuted or firmly established. This is why the OPERA collaboration has decided to open the result to broader scrutiny.
OPERA チームの人たちとしては、事実としてこういう観測結果が得られたものの、いかなる解釈を与えることもなく冷静に事態を見守り、誰かに追試を行ってもらい今後の行く末を見守りたいということなのでしょう。



