ヨーロッパの CERN で、9月10日から、高エネルギー物理の実験が行われ始めたのは喜ばしい。
Protons and Champagne Mix as New Particle Collider Is Revved Up
http://www.nytimes.com/2008/09/11/science/11collider.html?scp=4&sq=LHC&st=cse
最初の陽子ビームが出力されて、ようやくエンジンがかかったということで、今後の実験成果が期待される。実際に7 TeV のエネルギーを持つ陽子と 7 TeV のエネルギーを持つ反陽子が衝突した後に現れる素粒子の反応をみる実験は、始まるまでにもう数ヶ月かかり、さらにその解析に何年も費やされることだろう。
こうした解析結果により、ビッグバン直後の宇宙の状態を再現し、現在の素粒子物理学を形作っている標準理論の妥当性をより確かなものにするような結果が出たとしても、反対に標準理論の予測と異なる結果が現れたとしても、どちらにしても非常に興味深い。
ただ、このような「何が起きるかわからない」という物理屋の言葉と、「ビッグバン」とか「ミニブラックホール」という言葉が勝手に報道関係者の間で結びついて、地球がこの実験によってできるブラックホールに飲み込まれるというような大げさな妄想があたかも現実的な話であるかのように語られるようになるのは怖い。こんな悲しい結果さえ、招いてしまう。
インドの少女、欧州での「ビッグバン実験」を恐れ自殺
http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-33702120080911
このような非常に大きなエネルギーを持った粒子の反応時間は極めて短く、実験装置外で何らかの反応が起きるということはまずありえない。もっともあるとすれば、加速器のリング内をこうした高エネルギーの粒子がぐるぐるまわったり衝突したりすることによって、発生する放射性物質の散乱である。こうした施設で働く人々は、そのような放射性物質が反応すると知らせてくれるバッジをつけている。何かあれば、まずこの人たちに影響がでることになる。
いずれにせよ、これらのような報道で、最先端の科学実験が世の中に広まるのは喜ばしいことだが、上記のような将来のある少女にたいして気の毒な結果をもたらしてしまうことも怖い。



