JIN―仁― (ジャンプ・コミックスデラックス)全20巻を読み終えました。現代の外科医が何かの拍子で幕末の江戸時代にタイムスリップして、当時の医療技術では治すことのできなかった怪我や病気を治すというストーリー展開が非常に面白く一週間ほどで一気に全巻を読み終えました。元々は堀江貴文氏のメールマガジンで知った本作品ですが、この作品をもとにテレビドラマもできているということですが、すでにJIN-仁- DVD-BOX
も発売されており、タイミングよくJIN-仁- 完結編 DVD-BOX
も9月16日から発売されるということなので、是非見てみたいと思います。
医療もののマンガと言えば、手塚治虫先生のブラック・ジャックが余りにも有名ですが、主人公のブラック・ジャックのなんとなく暗く鬱屈したような性格や医師免許を持たない治療行為という性質のためか、作品全体に何となくどろーんとした灰色の影が覆った感があります。それに対して本作品は南方仁という主人公の誠実でひたむきな性格と、純粋に医者として治療できる患者を放っておけないという信念から、江戸時代の人々に対し、地位や身分に関係なく、専門分野である脳外科以外の治療も含めて自分ができる最大限の努力を惜しみなく発揮する姿が描かれており、作品全体としてとても好感が持てます。
個人的にはドラえもんの影響からか、宇宙ものとタイムマシンもののストーリーには目が置けません。本作品では、そういった SF 的要素は限定的ですが、坂本龍馬や勝海舟、新撰組など実際の歴史上の人物が主人公と交流していく中で、彼らの考え方を垣間みることができ、マンガの中とはいえこうしたストーリーの中で彼らの発言を見ていくと、時代背景に応じた必然性と因果関係が浮かび上がってきます。去年、ちょうど竜馬がゆくを読んだところで、あのストーリーは著者の司馬遼太郎氏のフィクションが含まれているとはいえ、おおむね史実に基づいて描かれているようなので、そこで得た知識や過去に中学校までの歴史で学んだことを思い出しながら興味深く読んでいきました。
また、最近エントリーに書いた江戸に学ぶエコ生活術で描かれていた江戸時代の江戸の街の様子も見事に描写されていて、活気あふれる浅草や日本橋の様子が、時折織り込まれているカラー印刷で見事に描き出されていて、それらを見ているだけでも楽しめます。庶民の長屋での生活の場や、武家屋敷などは、江戸に学ぶエコ生活術に描かれていた記述とも整合性があり、両者がともに江戸時代の時代考察をよくしている様子がうかがえます。また、当時の人々の我慢強さ、最後まであきらめない辛抱強さ、未知なるものや新しいものへの好奇心と、向学心も見事に描かれており、百数十年前に明治維新を成し遂げた人々の原動力もうかがい知れます。
医療技術に関する記述も非常に丁寧で、専門用語と江戸時代の言葉を用いて解説されていますが、改めて一世紀以上はなれた時代の間に進んだ科学技術と医療技術の進歩に驚かされます。実際の医療の現場に立つ方々の助言をもとにした、村上もとか先生の精巧な下調べのおかげと言えるでしょう。
歴史に「もし」はあり得ないと言いますが、こういったマンガやゲームの世界では想像力をかき立てながら思う存分その「もし」を楽しむことができます。「もしあのとき現代医療によって坂本龍馬を治療することができていたら」というようなストーリーを見事に展開しています。
歴史と医療の両方を同時に学べる非常に良いマンガだと思いました。



