

Mountain View では、毎年一回5月に一斉ガレージセールが行われる。まあガレージセール自体は各家庭で勝手にいつやってもいいものだが、5月のこの催し物は、市が企画するだけあって、市内の Rengstoff Park にて、大々的にフリーマーケットのような形で公園内に事前登録した人がブースをかまえるものと、各家庭で勝手に行われるものとが平行して行われる。自分でも過去何回か訪れて、1ドルで鉢植えを入れるバスケットなどを買ってみたことがある。実は過去に一回ベンダーとして登録したが、そのときに出張が入ってしまい、友達に頼んで店を構えてもらったことがある。今回初めて自分でブースに店を構えてモノを売ってみた。こういうときに売りやすいのは、自分の周囲の人なら買わなさそうだが、世の中の誰かは買ってくれそうなモノである。こういったものは、Craigslist で売るのもいいのだが、さすがに工具とか釘とかボルトなどは売りづらい。そこで今回ベンダーとして登録してみることにした。
結論から言うと、持っていったすべてをさばくことができた。全部で $88.25 の売り上げである。このうち、登録料が $15、および値札代が $2.06 だったので、これらの経費を差し引くと、$71.19 の利益が出たことになる。しかし、後述するように思わぬ出費が出てしまったので、実際にはもっと利益が減ってしまった。
準備としては、4月中旬の締め切り日までに、Mountain View のウェブサイトにいき、事前登録をしておく。それからイベントの前日までに売るものを取り揃えておいて、値札をつけておく。もちろん汚れたものはきれいに拭いておくなどの準備が必要だが、ほかの店をみていると汚いままの家具や靴が平気で売られていて、平気で買っていく人々がいるので、あまり神経質にならなくてよいのかもしれない。今回自分は、使わなくなった工具、釘、園芸用品、クーラーボックス、椅子、クリスマスツリーの飾り用 LED ランプ、コンピューター用周辺機器などを用意していった。
当日は7時から8時までの間に荷物の搬入を行う。この間、Rengstoff Park 内の駐車場が、事前登録したベンダー向けに開くので、登録した後郵送で送られてきた封筒に入っていた紙を車の前においておけば、スムーズに駐車できる。ただ、ベンダーが公園内に駐車できるのは、このときだけで、ベンダーは荷物の搬入後、すぐに車を周辺の指定された駐車場か、道ばたに止めておかなければならない。これは、モノを買いにきたお客が駐車できるようにする配慮である。さっさと搬入をすませ、車を近くの California Ave. 上の空いたスペースに止めておいた。なんとなく引っかかる予感はあったが、あまり気にせず車を止めた後自分のブースに向かった。

ブースに向かう途中で、ほかの人たちがどうやって店構えをしているのかを参考にした。用意のできている人は、折り畳みテーブルの上に品物を並べていて本格的である。しかし地べたに何か生地を引いて、その上に売り物をおいている人もいる。ちょっと考えてみて、過去の会社の引っ越しのときに手に入れた Office Depot の箱二つをひっくり返してモノを置く台にして、売り物の椅子二つの上のスペースもを使うことにした。また、過去の客としての経験上、歩道よりも奥まった場所に売り物があると、そのものに達するためにブースに入っていくのが何となく勇気がいるので、歩道のすぐ近くに売り物をおくようにした。
8時を過ぎて店を構えるやいなや、人々の流れが一気に入ってきた。いかにもブルーカラー労働者という感じの日焼け人々が工具や釘をみたり、IT 系のオタクな感じの色白な人がキーボードや無線 LAN ルーターを物色したりしている。と思うと、次から次へとスパナ、トンカチ、工具と工具箱のセット、クーラーボックスなどが売れだし、開始から1時間くらいで一気に三分の一くらいが売れた。どうも道ばたに売り物をおいておくという作戦はうまくいったようで、人の流れがあれば、確実に物色してくれる人々が現れる。釘やボルトは、手に取る人が思いのほか結構いるのに、なかなか売れないと思っていたら、意外なことに一見無関係そうな品の良さそうなおばさまという感じの人が買っていった。
前もって送られてきた封筒には、いろいろな注意書きが書かれているが、その中に食べ物や武器や兵器は売ってはならないと書かれていた。まあ食べ物や飲み物は食中毒などの危険性を伴うのでわかるとして、武器や兵器は普通一般の人が持てるものではないと日本の感覚では思ってしまうが、わざわざ注意書きがしてあるということは、普通にそれらが家庭にあるということを思い出させてくれる。まあ自分には関係ないだろうと思って店を構えていたら、主催者側の係の人が園芸用ののこぎりを取り上げ、「これは武器になるので、売るのも無料であげるのもやめた方がいい」と言ってきた。ここで逆らうのはそれこそ危険そうなので、バッグに隠しておいた。
1時間半ほどすぎて、始めの勢いが一段落した頃、隣のブースの人々が売り物をしげしげとみるようになった。その中の一人が椅子やらゲームやらテーブルクロスやらをいろいろと買ってくれた。彼女たちはフィリピンから来たということで、自分がセブに行ってダイビングにいったことがあるというと、彼女たちは今年ボラカイにいくと教えてくれた。ボラカイというのもダイバーにとって憧れ後の一つであるので、うらやましい。
それから2時間くらいは、たまに人々が訪れてきて、物色したり、買ったりしてくれたが、始めの勢いはすっかりなくなってしまった。隣のブースの人々と適当に世間話をして暇をつぶした。
勢いがなくなってきたところで、モノの値段を下げてみた。とにかくすべてのものを処分するつもりできたので、そのまま捨てるよりもちょっとでもお金になればいいという公算で、値段を下げてみたところ、なかなか売れなかったルーターや、ドライヤーや電話が売れ始めた。こういった小物は Craigslist でもなかなか売りづらいので、こうした場で売れてくれるのはありがたい。
12時を過ぎて、いい加減飽きてきた。売れ残った小物を Office Depot の箱の中に入れて、箱に “FREE” と書いておいたら、一気にモノがはけた。これから引っ越しをする予定だという女性が、その箱自体ももらっていいのかと聞いてきたので、もちろんだといったら、うれしそうに引き取ってくれた。こちらとしてもただ捨てるだけよりもそうやって喜んで使ってもらえる方がうれしい。
売れ残ったものは、4点ほどになった。例によって隣のフィリピン人の人たちに話しかけて、よかったらあげるよというと、喜んで引き取ってくれた。先ほど隠しておいたのこぎりも渡すと、「おおこれはキャンプのときに使える!」と喜んでくれた。
ということで、予定のものすべてを処分して、いい気になって車に戻ってみたら、駐車違反の封筒がワイパーのところに挟まっていた。道路の縁石のところが赤い訳でもないのに、なぜかと思ってよく周囲を見回してみると、車の後方に木に隠れて標識があるのが見えた。こちら側からでは裏側で何が書いてあるかわからないので、向こう側にいってみてみると、この先は駐車禁止ということが書いてあった。朝自分が止めたときにその駐車禁止区間に止まっていた車はいなくなっていた。非常に嫌な気分になった。開始前に配られた案内に従って、ちゃんと公園内のスペースを来客のために空けるべく、わざわざ離れたところに駐車したのに、その善意がこのような$30の罰金ということで報いを受けるというのは、本当にがっかりさせられる。しかしここでごねるのも無駄なエネルギーを使って疲れるだけなので、駐車場代と思って払うことにする。
まあその「駐車場代」と諸経費を差し引いても、$41.19 の収益が出た訳で、しかもかさばっていたものがすっかりなくなって、結果としてはよかったといえる。
帰る前に他のブースも見てみたが、服と靴が売れ残っているブースが多い。こういったものは既に使われているものという抵抗感、サイズが合わないと着られないという物理的制約、および流行に合わないという時代の流れともあいまって、売るのが非常に難しいのではないかと思う。ただ、こういう服や靴や売れ残ったものは、地球上のどこかには必ず必要とする人々がいるはずである。運搬費用がかかってしまうかもしれないが、うまくそうした人々のもとにこれらの品物が届くことを祈るばかりである。
数年前に比べると、ベンダーも客もずいぶん減っていたように感じるが、これは隣のフィリピン人家族も同じことを言っていた。事前に配られた案内書の地図には、ブースとして用意されたスペースがまだまだたくさんあったが、今日見たところそのスペースは埋まっていなかった。主催者側が期待したほどベンダーが集まらなかったということだろう。
一週間前は雨が降ったりどんよりとしたりした天気だったので、ちょっと心配だったが、すっかり晴れ渡り、風もなく気持ちのよい、典型的なシリコンバレーの5月の天気だったのはよかった。



